神経科学グループ(大学院指導教員: 池田正明中尾啓子)は、各以下のような独自の研究テーマに取り組み、また学内では、糖尿病内科、泌尿器科、神経内科、学外では、国立精神・神経医療研究センター、産総研、金沢大医学部、順天堂大医学部、慶應医学部等との共同研究を行っている。

特に、神経科学グループでは、『夏期休暇中プログラム』、『通年研究プログラム』、『春期休暇研究プログラム』と言う課外プロ】の一環として、医学部及び保健医療学部の学生が、放課後、生理学研究室で研究活動に参加し、成果を学会発表、論文発表と言った形で発表できるように【研究指導】する事を重視しています。 さらに、グローバル化をめざし、医学部学生のうちから科学英語を読んで・聞いて理解できるように論文紹介セミナー教科書の輪読会を行っています。

 池田正明は、1997年に埼玉医大生理学研究室で時計遺伝子Bmal1を発見して以来、 一貫して概日リズムの研究を行っている。生体内のどんな細胞にも概日リズムがあり、BMAL1/CLOCK, PERIOD遺伝子と言った転写因子が 形成する約24時間周期のリズムによって、それらのターゲット遺伝子に24 時間リズムを形成させ、それによって細胞周期等の調節を 行っていることがわかってきている。熊谷恵助手、大学院生の楊芳さん(2005-9年在籍 Yang F, et al, Biochem Biophys Res Commun, 380:22-27, 2009, Yang F. et al, J Atheroscler Thromb 20:267-276,2013)、
徐海源君(2003-7年在籍)、現在の大学院生(千葉康、岡部尚志(泌尿器腫瘍科)) らと共に、時計遺伝子による疾患関連遺伝子の発現制御の機構を明らかにすることで、生体リズムの視点から生活習慣病、癌、加齢、 精神神経疾患などの病態の解明や治療法の開発を目指している
<Latest publication>

Okabe T, Kumagai M, Nakajima Y, Shirotake S, Kodaira K, Oyama M, Ueno M, Ikeda M:
The Impact of HIF1α on the Per2 Circadian Rhythm in Renal Cancer Cell Lines. PLoS One, 9(10):e109693, 2014

Ikeda M, Ikeda M:
Bmal1 is an essential regulator for circadian cytosolic Ca²⁺ rhythms in suprachiasmatic nucleus neurons.
J Neurosci, 34:12029- 12038, 2014

 中尾啓子は、様々な組織・器官において細胞増殖,細胞運命決定,細胞分化に極めて決定的な 役割を果たしているNotchシグナル伝達経路の初期発生における役割を明らかにしてきた(Neuron16:275,1996、Mol Cell Biol20:61,2000、 Dev Biol 286:311,2007、Dev Biol 351:163,2011)。最近、神経系の初期発生過程で働くNotchシグナル伝達系の分子が、最終分裂を終え神経細胞 として分化した後、神経回路形成の過程で、再び一過性に、活動依存的に活性化され、ニューロンの可塑的変化に関与している可能性を見いだし 子宮内電気穿孔法を用いてその機能解析をおこなっている。また、こうした初期発生過程に関わるシグナル伝達系の機能や実験手法を種々の 病態モデルに応用することにより、1)膀胱癌モデルマウスで被貪食作用の抑制に働く
可能性のある細胞表面抗原分子をin vivo電気穿孔法により 急性ノックダウンすることにより、癌の進行を抑制できるかを解析する研究(泌尿器科との共同研究)や、2)眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)の原因遺伝子PABPN1の疾患変異型をマウス筋肉組織にin vivo 電気穿孔法により導入し、OPMDの疾患モデル動物を作出することによって、個別の病態を分子レベルで理解し、将来的な治療法の開発を目指す研究を行っているupdated松本恵(医学部6年生)池田熊谷(生理学&ゲノム研究センター)、神経内科との共同研究
<Latest publication> Kei Hori, Taku Nagai, Wei Shan, Asami Sakamoto, Shinichiro Taya, Ryoya Hashimoto, Takashi Hayashi, Manabu Abe, Maya Yamazaki, Keiko Nakao, Tomoki Nishioka, Kenji Sakimura, Kiyofumi Yamada, Kozo Kaibuchi and Mikio Hoshino

Cytoskeletal Regulation by AUTS2 in Neuronal Migration and Neuritogenesis

2014 Dec 24;9(6):2166-2179.

Orihara M, Toriya M, *Nakao K and Okano H. (*Nakao K.is a corresponding author.) 
Downregulation of Notch mediates the seamless transition of individual Drosophila neuroepithelial progenitors into optic medullar neuroblasts during prolonged G1
Developmental Biology 351(1):163-75 (2011)
<大学院生の教育> 神経科学グループの大学院生の指導方針は、『自ら問題を発掘し・解決できる能力の育成』であり、指導教員側は、問題のヒント及びそれを探求する為の実験系を提供するが、実際に具体的な問題(テーマ)を決定し解決のための具体的実験計画を立案し、実施するのは大学院生自身である。その経験こそが将来医療の場での問題解決に真に役立つからであるが、もちろん経験の浅い大学院生に対しては、最初は、経験豊富な指導教員が親身に相談に乗り、全面的にサポートを行う。 神経科学グループの目指す研究の方向性は、『正常な発生や発達のメカニズムを明らかにすることが、必ず病態の理解につながる』と言うもので、指導教員は、独自の実験系・視点で正常発生や発達のメカニズムを解明する研究を行っているが、同時に、そうした正常な機能が阻害されたときの病態モデルの開発・メカニズムの解析にも取り組んでいる。
<研究施設> 神経科学グループの実験施設は、共通動物飼育施設を併設する基礎医学棟とゲノム研究センタープロジェクト部門にあり、マウスを用いた動物実験、分子生物学、細胞培養、免疫組織学実験、生化学実験等に必要なすべての機器類が整備され、指導教員の技術指導で常時利用できる環境である。